おじいちゃんとの海の思い出の中にある鍵屋さんの職人技
今回の「みんなの鍵屋さん体験談」は、ナイーブ多摩さん(43歳 男 東京都 自営業)からの投稿です。
ナイーブ多摩さんは子供のころ、おじいちゃんとよく車でお出かけをしていました。
そんなある日、海へのお出かけから帰るとおじいちゃんの車が開かないことに気が付きます。
おじいちゃんは慣れた様子で近くに設置されている電話から鍵屋さんを呼んできました。
初めて見た鍵開けという職人技は大人になった今でも覚えている思い出です。
現在43歳の私、これはまだ私が5歳頃の話なので40年近く前という事になります。
子供の頃はよくおじいちゃんの家に遊びに行っていました
私はおじいちゃん子で、週末にはいつも三重県にあるおじいちゃんの家に遊びに行っていました。
おじいちゃんの家へ行きたいという思いの強さが小さな子供だった私を名古屋から1時間程の電車の旅に出る勇気を与えたのでしょう。
おじいちゃんは唯一の男の子の孫である私をとても可愛がってくれて、いつも車で色んな場所へ連れて行ってくれたものです。
その日は夏の暑い日で、おじいちゃんは私を連れて車で2時間程三重県の南へ下り見たこともない美しい海へ連れて行ってくれました。
道中の車窓から見えるリアス式海岸の絶景は今も記憶に残っています。
途中で食べた伊勢うどんの汁の黒さと、麺のふにゃふにゃした食感も又おじいちゃんの記憶と共にあります。
海は小さな子供の私には、どこまでも遠浅でどこまでも澄んでいてワクワクしました。
大人になった今、又同じ海に行きたいと何度も思ったものですがそこが何という場所なのか、どの辺りの海なのかおじいちゃんの亡くなっている今知る由もありません。
岩場にいる蟹を沢山捕まえて大満足の私、蟹を連れて意気揚々と帰途に着こうと車に戻るといつも穏やかなおじいちゃんが少し慌てた様子でした。
車のインロックがかかってしまい、中に入ることができません
小さな私には何が起こっているのかよく分かっていなかったのですが、どうやらインロックをしてしまい車に戻れなという状況であったようです。
今思えばどうやらそこはいわゆる穴場というやつだったのでしょう、周りには店はおろか家もないという状況です。
おじいちゃんは私を連れて街道を歩き続けましたが、私はそこにおじいちゃんが居るだけで少しも不安な気持ちにならなかったのをよく覚えています。
どのくらい歩いたでしょうか?
なんだかそれも楽しくて時間の感覚が思い出せませんが、歩き続けると電話ボックスに辿り着きました。
おじいちゃんは電話ボックスに入りどこかに電話をかけて戻ってきました、
「大丈夫」
と告げると私を連れて又来た道を戻ります。
しばらく海で遊んでいると、鍵屋さんがやってきました。
あっという間に車の鍵を開けてしまう鍵屋さんの職人技
鍵屋さんは、なにやら長い棒を取り出して車の窓の隙間に突っ込むとあっという間に鍵をあけてしまいました。
子供ながらにあの時の鍵屋さんの鮮やかな職人技に感動したものです。
既に日も沈みかけていて、美しい夕焼けと海、車の横で鍵屋さんを見ているおじいちゃんと作業中の鍵屋さんが一枚の写真のように脳裏に焼き付いています。
それから車に乗り帰途に着くと私の記憶はもうありません、寝ていたのでしょう。
おじいちゃんの家に戻り帰宅の遅い我々をおばあちゃんは随分心配したのでしょう、何やらおじいちゃんに小言を繰り返していたようでした。
私はそれも楽しい程おじいちゃんとおばあちゃんが大好きでした。
思い起こせば、おじいちゃんは鍼灸院をやっていていつも忙しそうだったし疲れていたのだろうと思います。
けれどいつも色々な所へ連れて行ってくれたり色々な美味しいものを食べに連れて行ってくれたのも、残された時間の中で私に色々な経験をさせたいという成長を願う気持ちの表れだったのだと子を持つ親となった今は分かるような気がします。
この鍵屋さんの仕事を見たのが、私の初めての職人技体験でした。
なんてかっこいいんだろう、子供ながらにそんな風に思い、それからというもの職人技に興味を示すようになりました。
おじいちゃんの鍼灸院を覗いておじいちゃんの施術の様子を見るのも好きになり、様々な興味を引き出してくれた鍵屋さん体験は私の人生の貴重な出会いとなりました。
仕事の素晴らしさを知らず知らずのうちに小さな時に体験する事ができた私はラッキーだったと思う、そんな思い出でした。
素敵なおじいちゃんとの思い出の中で鍵屋さんが活躍しているエピソードでしたね。
確かに鍵を開けるという技術は一長一短で見につくようなものではなく、職人技です。
海の近くで車の鍵が開かなくなってしまった場合、パニックになる人もいるかと思いますが、おじいちゃんは冷静に対応して鍵屋さんを呼べていました。
なかなか人通りがないところでも出張しに来てくれる鍵屋さんもいるので、緊急の時は頼るのが良いでしょう。